治療例についてのインタビュー
- A子
- 先生の診療日記を拝見しました。普段はあまり気にしてなかったのですが、こんなに咳の患者さんって多いんですね?!
- 國
- そうですね。私は咳の治療を専門としているので、少し遠方からでも、咳で悩まれている患者さまが来てくださっています。
- A子
- 國澤先生のところへ来る患者さまは、咳喘息の方が非常に多いんですね。本やインターネットでも、一般的に、喘息="ヒューヒューゼーゼーする"とよく聞きますが、先生の診療日記の中では、そういう患者さまが少なくて意外です。
- 國
- "ヒューヒューゼーゼーする"典型的な喘息の患者さんは意外と少ないんです。隠れ喘息つまり咳喘息の方が多いと予想しています。
- A子
- 隠れ喘息の方が多いなら、國澤先生のおっしゃる通り、病院に来ていない潜在患者さまはもっとたくさんいるんでしょうね。
- 國
- 咳喘息の患者さまの中には、当院に来る前に、別の病院で診てもらっている人も多くいます。でも、診察した先生から、「"ヒューヒューゼーゼー¨音がしないから喘息じゃないよ」、と言われている人が結構いらっしゃるようです。
- A子
- そういう患者さまはどうなるのですか?
- 國
- 先生からは「しばらく様子を見ましょう。」とか、「なんでしょうね?」と言われていることもあるようです。
- A子
- せっかく病院に行ったのに、咳の原因がわからないまま帰されてしまう方もいるんですね…。そうすると患者側としてはもどかしいですね。
- 國
- そうですね。患者さまにとっては、原因がなんであろうと、結局"咳が出る"という事実は変わらない。症状は治まっていないわけですから、治らない不安と咳のつらさで困ってしまう。そういう人たちがたくさんいらっしゃいます。
ただ、咳喘息って、実際には診断がとても難しいんです。(保険診療名に咳喘息というものがなく)統計もないんです。だから、呼吸器科専門の先生でも判断が難しいと感じる病状です。
- A子
- そうなんですか?
- 國
- そう、"咳"って、みなさんには身近な症状だけれど、身近だからこそ原因は多種多様で、医師からすると"何が原因の咳なのか?"という診断が難しいんです。
- A子
- 咳を治すためにはその原因を見極めて治療することが大切だけれど、咳の原因が何なのかを判断することは難しいんですね。
――― ゴホゴホと続く咳…、原因は『鼻』!?
- A子
- くにさわクリニックに来られる患者さまは、咳喘息のほかに、副鼻腔炎の患者さまも多いそうですね。
- 國
- そうなんです。
咳の治療に来ている患者さまの内、8割は鼻の治療をしています。
逆に言うと、気管支の治療をすることは意外に少ないです。それほど、副鼻腔炎は合併症として起こる事が多いです。
- A子
- 咳+副鼻腔炎や咳喘息+副鼻腔炎のように、併発している方が多いということですか。
- 國
- そうです。
――― 経験×機器の導入で患者さまの治療をよりスピーディーに!
- A子
- 先生の診察日記の中で、モストグラムという言葉が出てきますが、これは何ですか。
- 國
- モストグラムという検査機器で、呼吸抵抗を測る機械です。
- A子
- 何のために使っているのですか。
- 國
- 患者さまの呼吸の状態を確認するために使っています。
患者さまに気管支拡張薬を吸ってもらい、モストグラムを使って、吸ってもらった前と後の呼吸の状態を診ています。モストグラムの実際の画面はこんな感じです。
- A子
- (右図の)吸入前と吸入後でグラフの位置や色が違いますね。
- 國
- 自分の感覚や患者さまの感じ方に頼って診断していた部分が、目で見てグラフで変化を確認できるようになりました。わかりやすいだけでなく、患者さまへ症状の説明をする時も、とても楽になりました。
- A子
- こんな風に可視化されたデータがあるのは、患者側としてもわかりやすくて画期的ですね!
- 國
- これまでの治療で培った経験を、感覚だけではなく、目で見て立証されると診断が確実に早くなり、患者さまの治療も早く進められています。
- A子
- モストグラムを導入する前は、何を手がかりにしていたのですか?
- 國
- これまではほとんど自分自身の経験からの¨カン¨のみです。とくに咳喘息だと、治療のガイドラインに載っている診断方法だけでは判断しきれない(実際の患者さまに意外と使えない)様々なケースが多くて困りました。
例えば、"自覚症状で気管支拡張薬が効く人は喘息"を前提として、気管支拡張薬を吸ったら症状が良くなったら喘息とされています。
しかし、実際に咳喘息の人は、自覚症状の変化をあまり感じない方が多いんです。
開業して10年以上、いろんな患者さまの治療をしているけれど、患者さま自身に聞いても、3~4割くらいの人が「(気管支拡張薬を吸っても症状が良くなったかどうかは)感覚的にはわかりません」と答えられてきました。
それが、モストグラムの導入により、気管支拡張薬を吸ってもらい、その前後で数値が変わっている人は咳喘息の可能性が高いと数値でも示してくれます。可視化されることにより、"可能性が高い"ということがより明確になって、診断の後ろ盾にもなってくれます。
- A子
- 患者さまそれぞれの感覚にゆだねられていた部分が可視化されることによって明確になったということですね。わたしも「前回と比べてどうですか?」と聞かれても、少しの変化だと「よくわからない」と答えると思います。
- 國
- 患者さまの状態を聞くだけで"多分これかな~?"と思って治療を進めていくのと、モストグラムの数値を見て確実性が高まった状態で治療を進めるのとは本当に大違いなんです。
- A子
- 私が患者さんでも、見てわかると安心です。
- 國
- そう、モストグラムの結果で"この人には確実に効くよ!"とデータで出ているし、患者さまにもグラフを見せながら説明できるので、患者さまもイメージがつきやすくてありがたい。私にとっても、これまで以上に診察・診断の幅が広がっています。
- A子
- そうなると治療も早くできて、早く良くなったりしますか。
- 國
- まさにそうです。この症状は咳喘息かな?と調べる時間が短くなった分、何よりも治療を始めやすいし、自信を持って咳喘息の治療薬である吸入ステロイド薬を使えるのは僕にとっても患者さまにとっても大きいことなんです。
- A子
- 実際にどのくらい短縮されましたか?
- 國
- 検査したり様子を見たりする期間が、以前は2~3週間ありましたが、モストグラムの導入で、患者さまが来院した当日におおよその検討がつくようになりました。
- A子
- 2~3週間が当日に?
- 國
- 大きな違いでしょ?実際に、吸入ステロイド薬を使う治療もすぐに始められるし、治療から1週間ほどで良くなっている患者さまが多かったんです。
吸入ステロイド薬を使うときは、"咳は咳喘息が原因"という事実を確実にしてから使いたいんだけど、モストグラムを導入してから、患者さまに吸入ステロイド薬を使う理由もグラフを見てもらって説明できるので、納得してもらいやすくなりました。
- A子
- 納得して治療を受けたり、お薬を飲んだりできるのは嬉しいですね!
- 國
- 実際に、来院して1週間程度で良くなっていると喜んでくださる患者さまも多くなりました。
診断と治療が早くなったので、患者さまにとっても、咳で悩んだり、つらくて苦しい期間が短くて済むので、当院でのモストグラムの導入は本当に良かったと思っています。
- A子
- 咳って、意外と続くとつらいですもんね。周りの目も気になりますし。
- 國
- 患者さまの症状には、咳だけではなく、他の疾患がある事が多いので、鼻の治療などを追加して、最終的には咳ゼロを目指すのですが、モストグラムを使う事によって、とっかかりが全然違います。初診時でも自信を持って咳喘息の患者さんを拾い上げることができるし、これまでの経験にお墨付きをもらっている感じなので、治療も自信を持って進められます。
- A子
- 先生から、絶対に良くなる、治るという空気が伝わってくると、患者としてもとっても安心します。
- 國
- それと、治療を進めるにあたって、吸入ステロイド薬は、うまく吸えないとお薬の効果を発揮できないので、患者さまへ吸い方の説明を丁寧にすることを心がけています。
- A子
- 吸い方ですか。
- 國
- そうです。当院では、看護師が直接吸い方の説明をして、患者さまにも実践してもらってから処方箋を出しています。
- A子
- 使い方も説明してもらえるんですね。
――― 咳で悩むすべての人の力になりたい。
- A子
- 今後はどのように診療を進めていきたいとお考えですか。
- 國
- 咳で悩んでいらっしゃる患者さまはまだまだたくさんいらっしゃいます。そんな"咳"で悩む全ての人の力になりたいと思っています。
そのためには、自分自身の勉強や経験ももちろんですが、一緒に咳を治す仲間を増やしたい、と思っています。
- A子
- 先生のような頼もしいお医者さん、増えてほしいです!今日はいろいろとお話しいただき、ありがとうございました。